先月のVersaillesと摩天楼オペラに引き続き、
俺の中で待ち焦がれたリリースについての感想をば。 今回のアルバムは前作から2年ぶりという期間もあってか、 公式HPに特設サイトを設けてほぼ全曲視聴を用意し、メンバー自らが動画で作品にかけた想いを語り、友好バンド関係者からのコメントを掲載するという気合の入りようです。 この特設サイトでのメンバー自身からの解説を要約すると、 ・今作は実力以上の仕上がりとなった、まさに改心の出来 ・ドラム以外はセルフレコーディング ・ヴォーカルは「歌い手」としての役割に専念した といったようなところでしょうか。 さて、これらを踏まえて実際のインプレッションですが、 まず今までのlynch.の音楽を期待すると拍子抜けしてしまいます。 これはメンバー自身も語っていることですが、バンドとしてのライブ感よりも楽曲そのものの完成度を重視した結果ということです。 売りでもあった、タイトにまとまりつつ畳み掛けるような激しいフレーズは全編を通してほとんどありません。 各々が淡々と役目をこなしているような曲が目立ちます。 特にヴォーカルに関しては実際にシャウトのオーバーダビングが意外なほど少なくなっています。 俺個人としても葉月のメロディーに絶妙に絡めるシャウトというのはもっと聞きたいと思っていた部分ですが、それは多くありません。 また、セルフレコーディングの結果がポジティブに出た曲とそうでない曲が存在してしまってもいます。 個々の音の空間が明確にズレてしまっている曲がありますね。 前向きな評価を言うなら、まず楽曲のクオリティは間違いなく高いものに仕上がっています。 あらかじめ入念なプリプロで作り上げた形を各々が突き詰めているという点では間違いなくそうでしょう。 反面、その枠に収まってしまっている印象は否めません。これは当然のこととも言えますが、スタジオでレコーディングしながら上乗せられていったような部分が無いということです。 これが荒削りなバンドの新作だったならば評価は全く違い、絶賛に値する作品だったと間違いなく言うことが出来ます。 しかしlynch.はこれまでも完成度の高い曲を作ってきたバンドであり、今回の試みは大きな意外性として受け取られています。 それ故の違和感が率直に絶賛できない理由にもなってしまっているのでしょうか。 聞き込めばやはりこれはlynch.の音楽で、 そして今までより作り込まれているということが分かります。 新しい可能性を提示してくれたという意味で、もちろん今後にも期待をしています。 技術★★★★★ 個性★★☆☆☆ 歌詞★★★☆☆ 旋律★★★★☆ 印象:「聞かせるlynch.」 スポンサーサイト
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Versaillesのメジャーデビュー作品となるシングルです。
このタイトルは Acended master=(宗教的)高次元の指導者とdeadの造語ですね。 バンドのキーワードである「薔薇の末裔」に、 現代に現れた永遠の命を持つ者達による革命、 といった今作のコンセプトを重ねているのでしょうか。 まず印象に残ったのは楽曲の構成で、 各パートの主題を出し惜しみなくワンフレーズづつ繰り出しながら 1分にも満たずに1回目のサビへ到達します。 これはやはりメジャーを意識している部分なのかなと思わせますね。 ただし歌モノに走って簡単な構成になっているわけでは決してなく、 サビ以降は緩急織り交ぜたiお得意の複雑な劇的メタルに作り込まれていますし、 各個のフレーズを聴いても期待通りのクオリティになっています。 歌詞や初回盤収録のショートムービーの内容から、 「薔薇の末裔として永遠の時を旅する者達が主舞台に現れる」場面を 現実のバンドとしてのメジャーデビューに重ね合わせていることが解ります。 今回は初回盤3種にそれぞれ異なるショートムービーが収められたDVDが付き、 通常盤にはカップリング曲が収録されているという全4種での発売です。 贔屓目に見れば通常のアーティストよりもコストのかかるプロモーションの費用を回収する意味もあるのだとも言えますが、 やはりこうした売り方はファンの足元を見ているようで好ましいとは言い難いですね。 通常盤のみ収録の2曲目「月下香」は、作詞もHIZAKIによるものです。 歌詞はやはりメタラーと言うべきか、 独特の世紀末感といわゆる「クサさ」がよく表れています。 このクサさはKAMIJOが書く詩のそれとはまた違いますね。 コテコテのシンフォニックメタルで聴き応えがあります。 SFORZANDO(コンピレーションアルバムに収録)と同様、 Versaillesの「物語」からは外れた位置付けの曲のようです。 売り方にはいささか疑問がありつつも、 充分に聴く価値がある作品となっています。 ファンではないけど興味があるという方には当然通常盤がおすすめですが、ストーリーの部分まで興味を持てたならぜひ各種限定盤も手にとってほしいと思います。 技術★★★★★ 個性★★★★★ 歌詞★★★★☆ 旋律★★★☆☆ 印象:ポップ寄りながらメタルを楽しめる作品です。 |
摩天楼オペラ初のフルアルバムを手に入れましたので
早速聴き込んでいます。 ここ数年、発売を心待ちにしてしまうようなリリースというのは 俺の中でこの摩天楼オペラとVersaillesぐらいですね。 もちろん他にも好きなバンドはありますが、 「次はどんな作品が聴けるのか」という期待感を持てる対象は限られます。 このバンドは第1弾作品の「aikaloid showcase」で非常に大きな反響を呼び、すぐにKAMIJO主宰のSAS所属となったバンドです。 キーボードを正式メンバーとするのはV系にはあまり多くない構成かと思いますが、ジャンル的にはシンフォニックメタルが比較的近いような気がしますのでそこに違和感はなく、むしろうまくまとまっている印象です。 SAS所属後もシングルではインパクトの高い曲で期待に応える一方、 ミニアルバムでは楽曲の幅の狭さがやや難点となっていました。 バンドとして一つのスタイルを作り上げているけれど、そこからが広がっていかないということですね。 最近ではシングルのタイトル曲でも少し期待はずれなことがありました。 俺としてはフルアルバムに対しての一番の注目点は、その幅をどう広げてくるかでした。 今回のアルバムは 「ANOMIE」という名のバンドとして摩天楼オペラ名義を伏せて(実際は周知のことでしたが)配布された曲をタイトルナンバーに据えています。そのタイトルナンバーですが、これはまったく摩天楼オペラ王道ですね。 ただこれが原点回帰なのかどうなのか、アルバム全体としてはここ最近迷走気味だった本来の音作りに注力している印象を受けます。 音楽の幅という意味では多彩とは言い難いですが、個々の曲の完成度は充分な出来だと感じられます。最初のアルバムとしては当然とも言えますし、その意味での完成度は高いです。 次に期待することと言えば、やはりメリハリでしょうか。 「休符で表現する」という面で未熟な部分がある気がします。 メンバー全員が全力で表現する、というのは決して悪くないです。 が、バンドとしてはもう一歩上まで進める力を既に持っていますし、 そのキーは休符じゃないかなと感じました。 最初の作品の完成度が高すぎたが故にその後のハードルが高くなってしまっているバンドではありますが、パワーは衰えていないと感じられますし、これからにも期待が持てました。 アルバムの締めとなる「本質へと辿る愛」と、そこまでの流れはとても良いですよ。 技術★★★★☆ 個性★★★★☆ 歌詞★☆☆☆☆ 旋律★★★★☆ 印象:美しいメロディをぜひ聴いてみてほしいです。 |
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